スロースターター

朝っぱらから使い古された
愛の歌を聞いてた
君に会う日は
そうと決めている

刻むドラムスのオフビート
それに合わせて僕は行く
君と待ち合わせした
快速の先頭車両

窓の外を走る
送電線が僕を追う
黒い夜空から全てを見下ろす
あの月みたいに

また一つ駅に停まる
降りる人乗っかる人
そんな風に僕もきっと
途中下車を繰り返してきた

景色はスローモーション
まるで立ちはだかる試練のよう
勿体振らないで早く
君の元へ


人身事故のアナウンス
誰かがその身を賭して
叫んだ存在証明が
僕の胸に突き刺さる

窓の外に並ぶ
賃貸マンションが埋め尽くす
時の流れが行き着いた先で
僕らは笑えるかな

もう一つ駅に停まる
空いた席に座った人
そんな風に僕もきっと
誰かの居場所を奪ってきた

初速はスロースタート
だけど加速していくこの気持ち
唄うように軋む車輪に
乗せていくよ


この電車はまるで日常
同じことの繰り返しでも
進んでる 近づいてる
トンネル抜けたら
もうすぐの合図


君が待つ駅に停まる
気になんてならないフリ
そんな風になれやしない
僕を見て君は笑うんだろう

流れるスローバラード
まるで僕らの為の歌のよう
誰より早く辿り着くよ
君の元へ

ブレーキによろめきながら
また次の駅へ